沢渡日記

日々徒然

20191127

仕事明け、ブーツのかかとを修理してから家に帰った。確定拠出年金の移管手続きの電話をしてから、揚げを炙って刻んだ沢庵を炒め、豚肉とシメジで焼うどんを作った。食事中、宅配の荷物が届いた。俺の話は長い、の録画を観ていた。みつるはアスカに振られてしまった。渾身のカレーライスを半分残して、亀のボルトと部屋を出て行った。みつるは心からアスカを愛していたのだろう。アスカの家にいる時、すごく優しい顔をしていたから。コージさんは情けなくて繊細で、でも優しくてすごくいい。この夫婦は惚れ合ってるので見ていて安心する。謎にハルミンが振られて、海まで車出して!とみつるに言い放つところがよかった。海を見ている二人の姿がよかった。アスカだってみつるが好きだし、リクだってハルミンが好きだから、もう全部が切ない。世の中の恋する人たちに幸あれ。まだ会いたい人を見つけていない私にも幸あれ。緑茶を飲みきって立ち上がる。洗い物をしてからお風呂に入る。そのあと相棒の録画を観よう。

20191126

夜、七年前の日記を読み返していた。考えていることはあまり変わっていなかった。テレビからはドラマ、まだ結婚しない男が流れてきていた。信介のスピーチが泣けた。リョウジはどんなに辛い状況でも絶対に逃げなかった、だから奥さん、あなたからも逃げないと思います。リョウジが涙ぐんだ。私もスーッと涙が出た。信介は毒舌がひどいけれど、心の奥にはきれいな泉がある。五年前の今頃、結婚しようと思っていた人と別れた。この人は違う、と薄々わかっていた人で、でもどうしても幸せにしたかった。彼の方から泣きながら、あなたは違うと思う、と言われて、何も返せなかった。そんなことわかってる、違うから何だっていうの、と一人になってからメチャクチャに泣いた。その後、静かに受け入れた。私は恋愛が好きすぎる、量も多い。それは課題だった。果たしてその中で、本当に好きだった人は何人いるのだろう。

20191125

どうして誰かと過ごしてちょっと幸せになりたかっただけなのに、失恋プログラムが作動しているのだろう。どんな別れでも精神は疲弊する。疲れた…。もう色んなことがよくわからない。わかるのは、魂が震えない人とは長く一緒にいられないということだ。必要なタイミングで軌道修正が入ったということだ。昔の自分はもっと弱くて勘も鈍く、違うと思う人と何年も一緒にいたり、果ては結婚したりしていた。でも内側から違う、がじわじわと滲み出してきてクーデターのように現実を覆した。今はすぐに終わりの瞬間がわかるようになって、状況を引き伸ばさない。私はずっと、長い間誰のことも好きになってはいない。多分一年以上。その間、好きになりたかった人は何人もいた。誰も好きになれないから、好きになりたかった人に好きだと言われたかった。そうすればここから抜けられる気がした。でも、当たり前だけれど本当のところでそれはない。嬉しくて好きになったような気がするだけだ。今は身を削いで、静かに目を閉じて、その風の兆しを待つ。私がフォーメーションを変えたように、これから出会う人もフォーメーションを変えているかもしれない。いずれどこかのタイミングで、パズルのピースがぴたりと合うために。

20191124

午後、友達とお茶を飲みに行く。今の悩みを聴きながら、安全ネットの上の茫漠とした地獄を思った。そういう場所にいたことがあるが、体がイリイリして出てしまった。私には何もないかもしれない、という気持ちはわからなくはなかった。ただ、何かを持っているというのは主観であり幻想だし、もし何か一つ持っていると思ったとしたら、人はそこに依存して歪みが出る。ありなしはそれほど問題ではなく、必要なのは一人で沖へ向かって泳ぐ意志と、力尽きた時にさっくり諦める覚悟だけなのでは、と思う。安全ネットなしの日々はスリリングだ。明日どうなるかさえも全くわからない。

20191123

窓の外からの低い朝日を浴びながら、彼の背中に向かって尋ねた。あなたは私のことがどんな風に好きなの?ストーブにあたりながら彼は答えた。それは恋とは別の、人としての愛情だった。心がシンと静まった。じゃあもう会えない、と私は言った。マグカップから温かい白湯を飲んだ。喉に透明の液体が滑り落ちていく。彼は私にとって恋人ではない親密な存在だった。色んな話をしてお酒を飲み、肌を合わせた。私はその状況に満足していた。いつから自分の考えは変わってしまったのだろう。仕事の状況ががらりと変わったせいか、内にこもる季節のせいか。私は彼に、この先自分が望む状況を話した。彼は背中を向けたまま、もうあなたと話ができなくなるのは残念だけど…と呟いた。私は何も答えなかった。ストーブからカシ、カシ、と火が入った時の音が聴こえてくる。友達のままでいられなくてごめん。私は静かに言った。いきなり今生の別れを告げてごめん、それは言わなかった。彼は私と話すと安心すると言った。会う度に洪水みたいに思うままに喋り、時折、打ち明け話をして私の意見を聞いた。甘えていたのかも知れない。私もどこかでそうだったのだろうか。私は彼にどのような愛情を感じているのかずっとわからなかった。わからないということは多分、違うのだ。

20191122

仕事明け、ネイルのメンテナンスへ行った。こっくりと深いベージュピンクにしてもらう。グレーとかネイビーも可愛いよねぇ…と呟くと、モテから離れるよ、と言われて即刻やめた。指が綺麗に見えて女らしいネイル、一貫してそのオーダーとしている。お腹がすいたので一人焼肉をして、バーへ行った。店の中は混んでいて、何とかカウンターに一席作ってもらった。赤ワインを飲みながら一人でぼんやりした。左隣に座った男性が素敵だったので、ふんわり大人のお喋りをした。右隣の知り合いには特に感想がなく、ニッコリ挨拶だけした。約束していた人から連絡があった。店が混んできたから出ます、と返事をした。