20180423

昨日の夕方、カフェに寄った。静かな場所でコーヒーが飲みたかったのだ。店主は私の顔を見て静かに微笑んだ。こんにちは。カウンターの真ん中の席に座ってオーダーを済ませ、雑誌、POPEYEを読み始めた。映画と本のはなしという特集だ。一人一人の語りで映画と本が合わせて五つほど紹介されていた。紹介者はアーティストやデザイナーが多かった。グァテマラです。北欧のどこかのブランドのコーヒーカップが差し出された。口をつけると、香り高くて美味しかった。今週末は多くの人に会いすぎた。ちょっと疲れたな…。久しぶりに会う人や初めて会う人と何気ない話をした。特に楽しくはなかった。それは円周を拡大する作業だった。ただ自分の存在をあちこちに落とすための。相手もビジネスだから同じようなものだろうと思った。目的が違うだけだ。私は雑誌の頁をめくった。田我流、と小さく読み上げた。くっきりと主張的な文章は不思議と水のように染み込んできた。それは昔、自分がよく考えていたことに似ていた。好きな映画や本も同じだった。店主が大きなダンボールを抱えてカウンターに入ってきて、壁際の棚の上に置いた。次に顔を上げた時にはダンボールは跡形もなく消えていた。私は白い壁と銀色の水差しをぼんやり眺めた。さっきまで隣の席にいた人は知り合いだった。まだ自分が好奇心一本で社交をしていた頃、何度か話をしたことがあった。私とは種類の違う人だった。ニッコリ挨拶だけして、その後は特に何も話さなかった。相手も何も話さなかった。お互いに何を喋っていいかわからず、困惑する組み合わせなんだなと思っただけだ。雑誌を中程まで読んで、とてもいい特集だと思った。どの紹介者も面白く、私は小さく感嘆のため息をつきながら頁をめくり続けた。これから本屋に行くことにした。そろそろ出ようかな…。周りを見渡すと、お客さんはいつのまにか皆いなくなっていた。ちょっと電話をしてくるので座っててもらえますか、店主が私にいった。ハイ、と私は返事をした。店主が扉から出て行って、私はレコード盤が回るのを見つめた。鮮やかな黄緑色のレコードだった。彼は声も雰囲気も柔和でひっそりしているのに、話すと妙に落ち着かない気持ちになる。何故だろう…と考えて、少し早口なんだなと気づいた。リズムが僅かに、ずれる。私はまた壁際に置かれた銀の水差しを眺めた。いつ見ても流麗なフォルムだ。