沢渡日記

日々徒然

20181020

昨日の夜、バーへ行った。カウンターは鈴なりで賑やかだった。店主や居合わせた人と話していたら、恋人だった人の話題が出た。私は何もコメントしなかったし、静かに流した。ただ、評価というものはイヤだなと思った。私は彼がどんな思いでその仕事に取り組んでいるか知っていたし、それはほとんど命懸けに近い情熱だった。そのためになら女と別れることも厭わないほどの。私はビールのグラスに口をつけて少し黙った。沈黙が何も示唆しない程度の長さを意識して。そういえば前の恋人とも同じ理由で別れたな、と思い出した。…さんはドMだからなぁ、気づいてるかわからないけど。男友達にいわれたことがある。そういうことなのか?困ったな。帰り道、公園を通りかかると、いつも見上げていた樹が切り株になっていた。私はかがみこんで、真新しい切り口にそっと触れた。人間は傲慢だと思った。勝手な都合で生命にノコギリの刃を当てる。植物は人間を切り刻んだりしないのに。久しぶりに嵐を呼ぶほどの怒りを感じた。家に着いて、コートも脱がずにアイビーとサンスベリアの葉を撫でた。私の元にいる子たちは大事にする。指先がかすかに揺れた気がした。慰めてくれているのかもしれない。