沢渡日記

日々徒然

20181022

昨日の午後、ヨガに行かなかった。代わりにキッチンでゆっくりコーヒーを淹れた。この前聴きにいったDJのアルバムを小さく流して、ゆっくり本をめくった。永井宏のロマンティックに生きようと決めた理由。美しいタイトルだ。本を貸してくれた友達はこのように生きると決めているらしい。クッションの上に肘をついて寝そべると、テーブルの上に置いたアイビーが窓からの光を受けて影絵のように見えた。太鼓の音が艶めかしく流れてきて目を閉じた。この前の深夜、男の人と踊った。たまに大きなイベントで見かける人だ。私はDJのプレイに感極まって、ブースの前まで詰めて踊っていた。その人は私の隣にいた。ダウンテンポで恍惚とするような音の流れに、二人ともひらりひらりと腕を広げて踊った。時折ぶつかりそうになり、さりげなく身を交わした。そうしていると一緒に踊っているようだった。目も合わせないし、言葉も交わさない。ただ音楽と溶け合うような素晴らしい時間を共有していた。冷めかけたコーヒーを飲んで、チョコレートを齧った。これはロマンティックに生きる、という枠組みに含まれているだろうかと思った。イエス。声をかけ合わないという点で。知り合わないという点で。未遂のロマンティックは本当にいい。例えば声を聴いたり言葉を交わしたら、その記憶ばかりが強く残ってしまう。淡いものを淡いままで静かに味わうという贅沢。立ち上がって紅茶を淹れて、柿をひとつ剥いた。窓の向こうの空は薄く曇り、雲の隙間からオレンジの光が差していた。