沢渡日記

日々徒然

20190628

昨日の夜、デートをした。彼がさらりとドアを開けて入ってきた時、私は振り返って静かに彼を見つめた。会うのは久しぶりだった。こんばんは、と挨拶すると、彼は透明な目で私を見た。カウンターに並んで座ってお酒を飲んだ。店の中は賑やかで、二人の間だけしんとしていた。お互いにあまり話さなかった。彼が煙草を箱から一本取り出して吸い始めるのを見た。ゆったりと流れるような所作で、初めて会った夜を思い出した。一目惚れを信用してはいけません。心理学者の先生がコラムで書いていた。あなたはその相手に、自分の内面のヤバい部分を見ているのです。もし一目惚れをしてしまったら、まずは一ヶ月寝かせて、心が落ち着いたら諦めてください。クリスタルの灰皿の上で煙草を消した彼が、連絡先を教えて、と私に言った。静かな目をしていた。私は微笑んで頷いた。四ヶ月寝かせた場合は?私は心理学者の先生に心の中で質問した。それでも感動する場合は?連絡先を交換してから、私は白ワインをすいと飲んでグラスを置いた。彼は店主にハイネケンをお代わりした。今日出た新譜かけてもいい?と店主が言いながらカウンターの端へ向かった。緑色の瓶の影が彼の指先に淡く差していた。