沢渡日記

日々徒然

20190706

夜更けに二人で公園を散歩した。風のない夜だった。白く浮かび上がるバラの匂いをかぎ、ベンチに並んで座った。それから彼と長い話をした。さっきまでの浮き足立ったデートが嘘みたいな、静かな時間だった。彼が話し終えるのを待って、私は彼の手を握った。大丈夫だよ。見上げた夜空は漆黒で、紫色の雲が薄くたなびいていた。あなたが大丈夫だと思えないのなら、私が代わりに思うから。彼は黙っていた。私はばかみたいに真剣だった。もし私がヒーラーだったら、手のひらから伝える熱で彼を癒せるのに。彼が弱く笑って大丈夫だよといった。少し寒くなってきたね。ベンチから立ち上がって、ゆっくり歩いた。大きな木々が並ぶエリアに差し掛かると、夏の緑の匂いがした。あなたのことが好きなんだと思う、私は言った。彼は私を見た。まだどんな人なのかよく知らないけれど、生き物として。私がそういうと、生き物として?と彼は少し笑って聞き返した。こういうことは説明が難しい。ただ、隣にいる感じがとてもいいと思った。それからどちらともなく抱き合った。