沢渡日記

日々徒然

20190707

林檎の皮にはポリフェノールがたっぷり含まれているのよ。皮ごと食べて欲しかったけれど言うのは控えて、キッチンで薄く皮を剥いた。薬缶がシュンシュンと音を立て始めた。火を止めてマグを準備し、紅茶のティーパックを袋から取り出した。これ…。リビングから声がしてそちらに行くと、一輪挿しに生けたカーネーションの茎が半分からクタッと折れていた。さっき生け直したばかりなのに。私はカーネーションを花瓶から引き上げて、これくらいかなぁ、と彼に確認しながら茎をハサミで短く切り落とし、丈の低い花瓶に生け替えた。送別の?彼に聞かれて、そう、一週間くらい前にいただいたの、と私は答えた。そんなに持つんだね。紅茶を淹れて、薄く切った林檎と一緒にテーブルへ運んだ。どうぞ。窓を開けて向こうに見える緑を眺めながら、二人でお茶を飲んだ。空はくっきりと晴れていて、雲ひとつなかった。カーテンを揺らす風を感じながら、誰かとゆっくり過ごす土曜日は久しぶりだと思った。俯いてマグに口をつける彼を見た。伏し目がちの表情がいいなと思った。テーブルには銀色の腕時計が置かれ、煙草のソフトケースのフィルム部分には吸い殻が一本入っている。林檎を食べる姿を見るともなく見ながら、不思議だとまた思った。この人は私にとってどのような縁の人なのだろう。お茶を飲んだら、私は口を開いた。公園を散歩しませんか?いいですね、彼は静かに答えた。