沢渡日記

日々徒然

20190708

パン屋でレーズン食パンを買ったので、ピクニックに行くことにした。タッパーにミニトマト、湯がいた小松菜、チーズ、林檎を詰めて、ステンレスボトルに紅茶を注いだ。日差しには僅かに金色が混ざっていた。午後四時。遅いランチになってしまった。公園に着いてテーブルにチェックの大判ハンカチを敷き、食事にした。遠く斜向かいに見える桂の木のベンチには、小柄な老夫婦が座っていた。あの場所は人気があるのだ。レーズン食パンは三切れも持ってきたのにペロリと食べてしまった。チーズと合わせると美味しかった。紅茶を飲み切って、散歩をした。藤棚にはこんもりと緑の葉が生い茂っていた。七月に入って樹々の緑が一段濃くなったような気がする。林の小道を進むと、日差しが遮られて涼しくなった。背の高い額紫陽花が水色の花をつけていた。昨日と同じ木陰のベンチに座ってぼんやりした。微かな風が髪を揺らした。ここにいると森の中にいるみたいでしょう。私が言うと、隣に座っていた彼は、目を細めて気持ちよさそうな顔をした。何を話したらいいかわからなくて、思いつくままに話をしながら、でも一緒にいて何も話さないのが一番好き、と矛盾したことを言ったりした。時折、やわらかな葉擦れの音がした。遠く向こうで小鳥の高い鳴き声が聞こえた。彼が隣にいるのは自分一人でいる時にとても似ていた。そんな風に誰かに思ったことがあっただろうか。いつのまにか辺りが薄暗くなってきていた。私はリュックを背負って立ち上がった。林を抜けると明るい夕空が見えた。夏の甘い青。角を曲がり、遠くまで続く芝生を眺めた。キャッチボールいいね、と言った彼の声を思い出した。