沢渡日記

日々徒然

20190726

白ワインを飲みながらキッシュにフォークを入れた。最後に彼女へ送ったLINEのメッセージは、結局既読にならなかったんです。彼は言った。それはLINEの連絡先を削除したと思うよ。私は答えた。長い恋愛の終わりの話だった。そうか…。彼は呟いて、吹っ切るように顔を上げた。その気持ちをわかってあげなよ。彼は頷いて白ワインを飲んだ。水色のクレリックシャツの袖口に深いブルーのカフスがはめられていた。綺麗だ。イワシの香草チーズ焼きが出てきて、美味しいね、と言いながら食べた。次は赤ワインを飲みましょうか。二人で話して、ラム肉のミートボールを一緒に頼んだ。さっきの花火、よかったですね。彼が言った。今日はデートだった。雨の中、一つの傘に入って花火が見える場所まで歩いていた。終わりまでに辿り着けそうになくて、観覧車に乗った。観覧車はゆっくりと空に昇っていった。二人で窓に張り付くようにして、打ち上がる花火を眺めた。ちょうどクライマックスの時間で、金色の柳のような大きな花火が遠くにいくつも見えた。綺麗だね、と二人で歓んだ。長い間、私と彼は仲が良かった。今夜たまたまデートという流れになったけれど、恋に落ちることのない組み合わせだなと思った。一緒にいて楽しいし気も合う。でも、欠けのようなものがない。ラム肉のミートボールが出てきて、彼が取り分けてくれた。私は赤ワインを飲みながらそれを待った。…さん好きですよ、ふと彼が言った。ありがとう、と私はニッコリ返した。ドルチェみたいな告白だなと思った。ふんわり軽くて、すぐに消えてしまう。