沢渡日記

日々徒然

20190728

カウンターでビールを買って、薄暗いフロアへ入った。午前一時半。フロアには寒いくらい冷房が効いていて、ひんやりとした尖った音楽が流れていた。立ち飲みができる長テーブルに肘をついてビールを飲んでいると、前の方に彼の後ろ姿を見つけた。風情がある。私はそのまま少し眺めた。例えば微かな風に揺れる柳の木のように。声を掛けに行くと、彼はこちらを見て笑った。お酒を買ってくるね。私がソファーに座って音楽を聴いていると、彼が隣に座った。お誕生日おめでとうございます。ありがとう。そっと杯を合わせた。白っぽいカクテルのようなお酒が、天井からの細い光を受けてぼんやりと浮かび上がった。よく憶えてたよね、彼が言うので、印象的だったから、と私は答えた。一年前の夏の終わり、二人で公園を散歩していた。何気なく誕生日はいつなのと彼に尋ねた。その時はもう誕生日が過ぎていて、お祝いできなかった…と私は残念がった。来年、と彼は言った。恋愛の最中で、私はめちゃくちゃに彼のことが好きだった。ずっと一緒にいましょう、二人でそんな話ばかりしていた頃。ビールを一口飲んで、お祝いは一人でも多いほうがいいでしょう?と私は笑った。それから二人で近況を話した。ゆっくりお酒を飲みながら話すのは久しぶりだった。抑揚のない冷静な声を聴きながら、彼と話していると好きが溢れると思った。身体が自然と喜んでしまう。何気ない会話の中で笑い合いながら、私は深くリラックスしていた。この人は私の大事な人だ、そう思った。わずかに触れ合うTシャツ越しの腕から体温が伝わってきた。ねえ、新しい一年でどんなことがしたい?私は彼に尋ねた。