沢渡日記

日々徒然

20190802

タクシーを降りてコンビニへ寄った。彼が白ワインを買ってくれて、ぶらぶらと家までの小道を歩いた。家に着くと熱気がこもっていて、窓を開けて風を入れた。全然変わってない、隣に立った彼はそう言って窓の外を眺めた。冬しか来たことなかったでしょう。そうだね、一面真っ白だった。小さく音楽をかけて、二人で白ワインを飲んだ。彼とは三年半、一度も会わなかった。でも二人で話しているとあまりに自然で、時間が経った気がしなかった。眼鏡の形が変わっている、それくらいかもしれない。自分では選べない環境の中で得られることもあるよ。彼は言った。そうやって変わっていく人が九割。わかるよ、私は答えた。空のグラスをテーブルに置いて、彼は続けた。でもその世界だけでは本当の自分を失う気がする、だからフラフラと飲み歩いてしまう。四年前も同じことを言っていたな、と思い出した。二つの世界を行き来すればいいじゃない。私は答えて窓の外を見た。漆黒の空に月の姿はなかった。新月かもしれない。…さんは全然変わらない、彼が言った。あなたもね。そう答えながら、この人にとって私は向こう側の世界にいる女なんだな、と思った。送りましょうか。私が言うと、彼は立ち上がって、ギュッとしたら帰る、と言った。それから長いハグをした。懐かしかった。でも私はもう彼のことが好きではないんだなと気づいた。会わなかった時間のことを少し思った。キスを躱して顔を上げた。キリがないから終わり。ニッコリとそう言って、足りない、と甘える彼を玄関まで送った。