沢渡日記

日々徒然

20190817

夕方、木漏れ日の下で本を読んでいた。村上春樹騎士団長殺し。まりえの空気を斬るような鋭さに感じ入った。この物語は数ページ読む度に神聖な霧に包まれるような気持ちになり、長く読み進めるのが難しい。本を閉じてベンチから起き上がり、ステンレスボトルの熱い紅茶を飲んだ。友達からジンギスカンとシシャモを焼くから家に来ないか、と連絡があった。待ち合わせの時間に間に合わなさそうだったのでお断りした。ハードカバーを何冊か積み上げて枕にして、ごろりと仰向けになった。緑のモザイクの隙間から、くっきりとした青空が見えた。今年の夏はずっとこうして森の中にいる気がした。ふと、昨日一緒にお酒を飲んだ人との会話を思い出した。頭を使い続けていたいんです。彼はそう言った。ちょうど今、新しい知識を習得している最中のようだった。最高だなと思った。私と全く同じだ。転職した理由がそれだったな…と思い返していた。狭く限定した知識ではなく、広く人の役に立つ知識を身につけたかった。そしていずれ、仕事を通して社会に還したい。今は必要な知識が多すぎて、事務所にいる時間だけではとても追いつかない。それで仕事明けに図書館へ通って勉強しているけれど、全く苦ではない。本当にしたいことは仕事でも勉強でも全部遊びの感覚だ。西からさらりと乾いた風が吹いた。日焼け避けのカーディガンの前を合わせて、私は再び本の続きを開いた。騎士団長がイデアについて説明をしていた。あらない。