沢渡日記

日々徒然

20190929

少し外を歩きましょうか。彼が言って、私たちは店を出た。午前四時。まだ夜が続いている。彼と並んで歩くのは久しぶりだった。二人で何時間お酒を飲んでいたのだろう…。白ワインですっかり酔っていた。前を向いたまま、ぽつぽつと何気ない話をした。靴音が夜空に高く響いた。公園の樹々が少し紅葉してきたよ。さっき、バーのカウンターで彼に話した。あぁ、と彼は答えた。以前、その公園で彼と散歩をしたことがあった。夏の初めの午後、空には甘い青空が広がっていた。彼は林道に咲く紫陽花の写真を一枚撮った。見せてというと、適当に撮ったから、と彼は控えめに笑った。そっか、私は返事をして、並んでゆっくり歩き出した。風が樹々の間を抜けて、葉擦れの音がした。この時間が永遠ならいいのにと思った。大通りに出て、信号待ちで立ち止まった。私はもう、あの頃みたいに彼を好きではないんだな…と静かに思った。我々は旬をずらしてしまった。仕方のないことだ。こうして友達みたいに仲良くなったのも、彼との縁の流れかもしれない。そこの角まで送るよ、と彼が言った交差点に着いた。またね、と彼が私の手を握った。ハグだけしようか。ギュッと抱き合うと、私と同じ温度がした。彼は地続きだと思った。シンプルな事実として。手を振って明るく笑って別れた。