沢渡日記

日々徒然

20191027

熱い紅茶を淹れて、柿をひとつ剥いた。テレビをつけて、録画しておいた相棒の初回SPを再生した。秋田の海辺のシーンが流れた。冠城とライターの楓子が、グレーの波を見つめながらぽつりぽつりと話していた。二人とも右京さんの身を案じていた、映画みたいに美しい…と思いながら、ぼんやりと眺めた。楽しみにしています。彼が言ったその言葉の意味を考えていた。私に会いたいのか、と気づいて、はっとした。気持ちをほとんど言葉にしない彼がそう言うのなら、そうなのかもしれなかった。私も楽しみにしています。そう答えて一枚の写真を送った。恋文の代わりに贈る楓の紅を、頭にフレーズが浮かんだ。五七七、俳句にも短歌にも当てはまらない。彼に会ってから、他の人とデートをする機会が幾度かあった。皆、ふんわり楽しいだけで終わった。好意を伝えられても、手を握られても、引きとめられても、サラサラと砂のような気持ちでいた。彼のことだけが何度となく思い出された。今でもまさかと思う。そんな風に想うつもりは全然なかった。でも私はずっと、彼だけに会いたいのだった。