沢渡日記

日々徒然

20191129

今夜はお祭りみたいですね。テーブル越しに立つ人に声をかけると、お祭り好きですか?と彼は尋ねた。柔和な笑顔。はい、と返事をしてニコッと笑った。立ち姿に風情があって、何となく話したいなと思った人だった。灰皿を借りたい、と言う彼が斜向かいの椅子に座り、二人で話した。彼は私がフロアで踊る姿を遠目で見ていたようで、確率論による人目を引く指数について話した。数式で表現されるのは初めてで、面白いなと思った。なんとなくこの人にはフルボリュームで話しても大丈夫な気がして、自分が普段考えていることをランダムに話した。彼は面白そうに話を聞き、それに対する考察を返した。理論とイメージがマーブルみたいに混ざり合う、不思議な話し方だった。会話が思いがけない方向に展開していくのを楽しみながら、時折私は彼の目を見た。知的で上品な顔立ちで、眼鏡がよく似合った。誰かに似ている気がしたけれど思い出せなかった。彼が仕事で創った作品をiPhoneで見せてもらいながら、これが好き、こっちも好き、と指をさした。緑と青の繊細な線が複雑に絡む文様に見入った。昔から、私の出会う人は視覚的な仕事をしている比率が高い。それは人の纏う雰囲気に滲み出るのだろうか。煙草の煙からふわりと甘い匂いがした。ガラムですか?と尋ねると、そう、と彼は嬉しそうに答えた。この匂い大好き、私もニッコリした。