沢渡日記

日々徒然

20191221

午後、検査の合間にランチへ外に出た。カフェでパスタを、と思いつつ入ると店の中は混んでいた。料理が出てくるまで三十分ほど待つとのことで、ギリギリ間に合いそうなので頷いた。ロケーションの良い席を選んで座ると、向かいのテーブル席の退屈そうな顔をした長い髪の女の子と目が合った。隣の席にカップルが座った。女の子が蛇革のブーツを履いていた。ジュースを飲みながら雑誌をめくった。ふと、源氏物語のコラムが目に留まった。夕顔が多分一番好きで、明石や浮舟もいい。源氏物語は恋愛の不可能性を書いている、とコラムニストが言っていて、不可能性?と思った。隣に座ったカップルの会話が聞こえてきた。出会いたての男女の模範解答みたいなやりとり。退屈だなと思った。もっと混沌とした人生の深淵の話とかしないの?喜ぶのは私だけかもしれないけど。ふらっと男の子が一人、席を探しながら入ってくるのを見かけた。独特に閉じた雰囲気で、目が合うとすぐに相手は逸らした。あんな男の子の話なら聞いてみたいなと思った。パスタを手早く食べて、ダウンを着て席を立った。食事を急ぐのは不本意だけれど仕方ない。扉の近くの席にさっきの男の子が座っていて、一心不乱に文庫本を読んでいた。いいね。検査に戻って先生と問診。向かいに座ると、仕事慣れた?聞かれた。まあまあです、と答えると、そんな顔してるよ、と先生はニコニコした。そっか。私そんな顔してるのか。