沢渡日記

日々徒然

20200612

私は私を侵害しないように生きてるし、誰のことも侵害したくない。とにかく平和がいい。グレープフルーツをしぼり終わって私は言う。焼酎の入ったグラスに慎重に注ぎ込む。私たちは磁石なんだよ、と彼女は言った。ハイボールをぐいぐい飲んでグラスを置き、磁石には磁石の使命がある、と意志を持った声で付け加える。もしそうだとしても、好きな人しか吸着したくない。私は答えた。でもさ、例えば誰かがあなたの振る舞いを面白くないと感じたとして、それはその人の修行のタイミングってことなんだし、受け入れてあげるのが愛なんじゃない?と彼女は言う。私は首を振る。自分が愛を感じる人にならね、と答える。愛のない人への修行にまで関わっていくパワーはないよ。彼女は大きな瞳で残念そうに私を見つめた。私はニッコリして、さりげなくシールドを降ろす。立ち入らないで、と思う。私には自分の中に何人もいるし、それぞれの役割と負荷を統制して、微妙なバランスを保っている。誰にもわからない。私にだって全部はわからないのだ。分析しないでください。平匡さんが言った台詞を思い出す。私のことを解ろうとしても構わないけれど、私はそのための材料を自分の監修で差し出すだけだ。あなたが解ったと思う私、を提供するために。本当は、私は自分のことを磁石だと知っている。本当は、人の心が揺れるのを風景のように眺めている。私は何もしない。何もしない、ということをして、相手が乱れていくのを見ている。そして逆に、何もされない、ということで自分が乱れるところも、冷んやりとした気持ちで眺めている。