沢渡日記

日々徒然

20210820

仕事明け、デパ地下のパン屋でクリームパンを買う。職場で熱い紅茶をステンレスボトルに詰めてきた。映画館はそれほど混んでいなかった。今日公開のドライブ・マイ・カーを観る。夜のドライブでの、家福と高槻の会話が印象的だった。自分と折り合いをつけるしかない、と高槻は異様なくらいキラキラした目で言った。彼の狂気が見え隠れするような、危うい感じが良かった。映画を観終わって、自分を裏返されたような、身ぐるみ剥がされたような気持ちになった。映画館を出て、外を歩いた。いつのまにか川べりまで来ていた。自分と折り合いなんかつくわけがない、と暗く思った。私が一番距離を置きたいのは自分だった。近くに人を置くと鏡のように私を写す。それが嫌だった。私は感情の量が多すぎるし強すぎる。自分の個体では持ち堪えられないほどだ。だから自分のエネルギーが高くなりすぎないように、いつも風通しのいい場所に身を置いてきた。自分の力が強く出過ぎない場所に。私はいつも新参者で、淡く不明な存在として。そんなことに気づかされて、一体どうすればいいのだろう。映画のことをまた思い出した。一般的なハイライトは、家福とみさきが蘇生していく、ラスト二十分のシーンなのだと思う。でも私にとっては違った。高槻を車から下ろした後に、初めて家福が助手席に乗って、二人で煙草を吸うシーンだった。高槻から大きな啓示を受けたような、でもまだ何も糸口が見つからない、やり切れないような気持ちが伝わってきた。サンルーフを開けて二人で腕を出して煙草を風に当てる、あのシーンは本当に良かった。