沢渡日記

日々徒然

20201121

久しぶりに家でパウンドケーキを焼く。米粉とアーモンドプードル、玉子。パウンド型から取り出して窓際で冷まし、ナイフでカットする。懐かしいお菓子の匂いがした。夕方、八百屋で野菜を買い、ホームセンターで電球を買った。リビングのテーブルの艶出しをしたいので、蜜蝋を手に取る。少し考えて棚に戻した。家に戻ってドラマ、恋する母たちの録画を観た。吉田羊演ずる優子さんは、仕事は超絶できるが女としてはヤバいタイプで、そのギャップが良かった。しばらく現場にいないと忘れてしまうが、恋愛においては自分もろくでもない要素満載で、そういうのは何かの拍子に出てくるのだろうと思う。優子さんみたいに。今はマトモな自分しかいないから制御もしやすいし楽だ。磯村勇斗演ずる赤坂くんがいい。この人の目が好きだ。不思議な色をしている。冷たいのに熱い。ケーキはラップに包んで玄関の棚に置いてある。明日になったらもう少ししっとりして味が馴染むのかな、と思う。

20201120

仕事明け、買い物に行く。電気屋で青の電球を買い、菓子食材店でアーモンドパウダーとレーズンを買う。家のリビングをクラブ仕様にするのと、久しぶりにケーキを焼くのが目的。それから、ぶらぶらと生活雑貨屋を眺める。家で過ごす時間が増えると、部屋がお城という位置付けになる。より快適で自分好みに、という思いが高まっていく。SNSで知り合いの投稿を見て、お店に行けば会えるのか…と思ったけれど、ふわっと気が向いた程度で人に会うのはやめよう、と諦めた。楽しくなって自制が効かなくなって、後で後悔したくない。カフェに寄るとカウンター席は珍しくガラ空きだった。ソファーに深く座り、温かいココアを飲んだ。一人ならいつでも帰れるから気楽だ。誰かを誘うとそういうわけにはいかない。店の壁に映った枝もののディスプレイの影をボーッと眺めた。一週間の疲れがほどけていく。

20201119

夜十時、テレビをつけてニュースを見る。コロナが勢いを増している。この状態では自分がいつどこで濃厚接触するかわからない。一日中マスクをほぼ外さない生活にも慣れた。豆大福を齧って、ほうじ茶を飲む。今夜も料理をしすぎてしまったなと思う。少し時短しないと寝る時間を圧迫する。DVDに切り替えて、私立探偵濱マイクを観る。ミスター・ニッポン。殺し屋が沢山出てきて賑やかだった。女王様スタイルの光浦靖子がかっこいい。アディオス、と去っていく杉本彩も。昨日観た「時よ止まれ、君は美しい」は、わずかに今の好みからはズレていた。抒情的にも種類がある。濱マイクは、口は悪いけれど優しくて情け深い人だ。こういう人はあまり得意じゃない。なぜだろう?わからない。距離の問題かもしれない。今日は冷凍庫の中に溜まっていた保冷剤を処分してスッキリした。家にいる時間が長くなり、細々とした整理に手が回るようになった。

20201115

午後、公園に散歩へ行く。落ち葉をガサガサ鳴らして歩くのは気持ちがいい。向こうからアルトサックスの音色が聴こえてきて、音を頼りに歩いていくと、緑色のダウンを着た女性が池に向かって吹いていた。ジャズですか?と尋ねると、スイングです、と返ってきた。素敵で。ぐるりと池の周りを回った頃、風になりたい、のメロディが流れてきた。そうだね、ここが楽園じゃなくても。神社の境内には市が出ていた。こんな時期でもやるんですね、と思いつつ藍の器などを眺める。その後、長いお祈りをした。自分はずっとどこにも辿り着きたくなくて、横道に逸れてばかりいたなと思う。今は、用意されている場所に辿り着きたい。

20201114

午前中、寝不足で呼吸器科の検査に遅れた。先生が感染外来に入ってしまったと言われる。コロナ外来をやってるんだな、と思う。薬だけもらって、最寄駅のケーキ屋に入る。モンブランを眺めて、やっぱりミルクレープを買う。レジの側におうちカフェ応援、とポップが出ていた。おうちカフェ、極めてますよ、と思う。家に着いて、熱い紅茶を淹れてお茶の時間とした。昨日の夜のことを思い出した。久しぶりに会った友達から、もう会えないかと思った…と切羽詰まった声で言われ、ハグをされた。夏の終わりから体調を崩してしばらく引きこもっていただけなのだが、いきなり消えた私に憶測が飛び交っていたようだ。この人は私のことが好きなんだな、と思った。私もふんわり好きだけれど、切羽詰まる種類のものではない。そういうのはしばらく休みたかった。三年好きだった人と離れて、ようやく身体から抜けてきたところなのだ。フォークでケーキを少し切って口に運ぶ。ふぅ、とため息をつく。ミルクレープって完璧に美味しい。マスクをしたままハグするのもいいなと思った。どこか順当じゃない感じがして。

20201108

昼過ぎに起きて、家の事務仕事をする。三時ごろに家を出て、公園を散歩する。木々を見上げて紅葉を愛でる。落ち葉をかさかさ言わせて歩く。その後、神社で長くお参りする。平和を祈った。帰りにふと思い立ち、ニトリへ行った。ネットで見ていた食器をいくつか見たけれどピンと来なかった。器は実物を見て触らないとわからないなと思った。キッチン雑貨を少し買った。家で仕事をする用のワーキングチェアを見た。スペースを取りそうなので、折りたたみがあればいいなと思う。ご時世的に仕事が完全リモートになるといい…と思いながら。スーパーへ行き、月に一度のまとめ買いをする。トマトのホール缶も買う。久しぶりにミートソースを作ろうかと思う。家に帰り、事務仕事の続きをする。通院の記録などをまとめてスッキリする。実務的なことは特に好きではないけれど、火がつけば延々と行える。一通り終えてから料理をする。鮭をバターで焼いてキノコのソースをかける。ボイルした小松菜を添えた。ご飯の後、緑茶を淹れて豆大福を食べながら映画を観た。

20201105

友達とカフェに行った。二人とも気持ちが暗澹としていた。温かいジンジャーミルクティーを飲んで、お喋りするうちに少し落ち着いてきた。私にとっては、日々の経験を大事に積んでいこう、と思った矢先のことだった。外から強制的にブレーキがかかり、身動きが取れなくなってしまった。誰かを責めるようなことでもないし、状況自体はすんなり受け入れられる方だ。ただ、大きなことを考える間を与えられたような気持ちになった。友達と別れて、買い物に行った。去年の暮れに、諸々成就しますように、と祈ったことを思い出した。叶ったよ、と思う。好きな人と相思相愛になり、仕事とも相思相愛になった。嘘みたいに大変な道のりで、信じられない思いだった。そして束の間の凪が訪れた。でもそうなると、もう私にはやることがないのだった。好きな人のことは手放してしまった。仕事もきっかけがあれば簡単に手放すだろう。そこに自分がいるうちは最大限の努力を積むけれど、失いたくないからではない。