沢渡日記

日々徒然

20190712

夜、バーで白ワインを飲んでいた。雨は次第に強くなり、無数の雨粒が窓を打ちつけていた。通りの向こう側に見えるビルの光がいくつも滲んでいて、椅子にかけたままぼんやり見下ろしていた。綺麗だ。店の中には静かなアンビエントが流れていて、くぐもった水音に包み込まれるようで心地よかった。あなたのことは諦めますね。彼にそう言った後、気持ちがスッと軽くなった。悲しくはなかった。今はどうなのだろう。考えてみたけれどわからなかった。斜向かいの男性三人連れが大声で話していた。店主がさりげなく合いの手を入れて、一人が女の子の話を始めた。私は白ワインを飲み切ってグラスをテーブルに置いた。彼とは、これからも友達として仲良くしたいとは思えなかった。そういう量の好意ではなかった。彼は私の百パーセントだった。でも、状況的に二人で現実を過ごすのは難しいこともわかっていた。そして、今の彼が私ほどの熱量を持たないことも。本をたくさん読んで、長い時間考えた。そして、叶わないんだなと静かに思った。この先も茫漠とした時間を過ごすなら、いっそ彼に振られたかった。店主に白ワインをもう一杯頼んだ。雨まだ降ってますよね、店主に聞かれて、ええ、と答えた。もう少しここでぼんやりしていてもいいですか、グラスを受け取りながら私は尋ねた。僕の方はいつまででも。店主がやわらかく答えた。私はニッコリして、また窓の外を眺めた。もうあの人には会えない。会ったらまた好きだと思ってしまうから、もう会わない。そのことが細胞の一つ一つに染み渡るまで、どれくらいの時間がかかるのか。