沢渡日記

日々徒然

20190804

目覚めると、窓の外にはきれいな青空が広がっていた。午後三時四十分。生乾きの髪をドライヤーで乾かして、床にぺたんと座ったまま窓からの風に吹かれた。今日も海に行けなかった、と思った。朝、百合の人が青いタクシーに乗る姿をベランダから見届けると、ベッドからシーツと枕カバーを外して洗濯機を回した。使いさしのバスタオルも一緒に入れた。シャワーから出て、頭にタオルを巻いたままグラスの水を二杯飲んだ。テーブルに置いたアイビーの葉先に少し触れると、ぷる、と震えが伝わってきた。また成長している。ふいに眠気が押し寄せてきて、床にころんと転がってウトウトした。明け方、彼の隣で私は眠りに落ちた。それは滅多にないことだった。他の男と何が違うのか考えたけれど、長い知り合いであること以外は思いつかなかった。不思議と皮膚が警戒を解いた。彼のことは人として好きではあったけれど、隣で眠る相手として一度も考えたことがなかった。私という外側は無自覚で、私の内側にいる人が直接、彼の内側にいる人にアクセスしたのかもしれなかった。最近そういうことが増えている気がする。三年前、初めて彼に会った夜を思い出した。整髪料を持ってないからオリーブオイルをつけてる。階段の踊り場で、椅子に座った彼はそう言って懐っこく笑った。花のような人だと思った。立ち上がってドライヤーとトリートメント剤を片付けた。お腹すいた。これから着替えて散歩に行って、買い出しも行こう。ふと、松尾芭蕉の句を思い出した。真夏はゆっくりと着実に過ぎていく。今朝の記憶もまた、夢の跡のひとつなのか。