20200105
午後二時を過ぎた頃、氏神様へ初詣へ行った。境内はいつもより混んでいた。お焚き上げに去年のお守りを出して、短く神様の前でお祈りをした。それから御神木の幹に少し触れた。社務所の扉を開けると温かくて眼鏡が白く曇った。バイトの巫女さんから新しいお守りを買った。去年は色々と詰め込んでやりすぎてしまう病が治るように祈り、ほぼ完治した。今年は、気持ちとズレがあることを行う病があと少しなので、治るように祈りを込めた。その後、スーパーまで買い出しへ行った。寒い。リュックと買い物袋二つにぎっしりと食材を詰めて帰る。実家から戻ると食事の支度が大儀だ。家に着いて、豚肉を刻んだりうどんを茹でたりして、比較的まともな食事を作って食べた。夜はカルテットの続きを観て過ごした。合間にお米を研いだり明日の準備をした。八話は小休止のような幸福が滲んでいて好きだった。SAJの法則、と家森くんがすずめちゃんに言った。好きだよ、ありがとう、…冗談だよ。好きな人にありがとうって言われるの、めちゃくちゃな気分になるよな、と思った。でも、それ以前に男の人はなかなか好きだってハッキリと言わない。あれはどうしてなのだろう。匂わせられても、わからないふりをして無視してしまうことが多い。
20200104
午後からストーブを五時間炊いているけれど、部屋の中はなかなか暖まらない。家に食べるものがないのて、紅茶を淹れて、母がお土産に持たせてくれた黒餡の月餅を食べた。電気毛布にくるまって、カルテット、六話から続きを観た。ミキオが真紀さんから逃げた理由がわかった。自分は恋を失いたくないって、早いタイミングで相手に言えよ…と思った。でも真紀さんが自分のことを大事にしてくれているのがわかっていたから、苦しかったのだろう。ふと、占い師の勉強をしている人から、物事を断ち切るエネルギーがある人とない人がいる、という話を聞いたことを思い出した。自分はどんどん切っていく方で、そのほうがさっぱりしていいと思っている。終わりがわかった方がお互いに別の道へ進めるから。iPhoneでメールを確かめると、彼からの返事は来ていなかった。年末に二人で会ってから、定期的なやり取りが続いていた。なんでもない日々のこと、音楽の感想。ロングキャッチボール。このまま止んでしまえばいいのに、と思った。今年は幸せになりましょうね。彼にそう伝えた時、私ができることがあればと思っていた。ただ、私自身の幸せは?と思うとわからなくなる。真紀さんみたいに、別府くんみたいに、百パーセントで相手を求めているわけじゃない。美しいエンドロールを眺めながらぼんやりした。僕は一体、何からあなたを奪えばいいんですか?別府くんが真紀さんの手を取ったまま、暗い目で呟いた言葉を思い出した。
20200103
今日も鼻水が止まらない。鼻炎ではないかもしれない。寒そうなので外出を諦める。午前中、ヨガをしたり本を読んだりして、午後からカルテットをまとめて観る。二話から四話までが好きだなと思った。たとえば喪失感を真紀さんが救う。家森くんのさみしさを三人が救う。すごくよかった。私も周りにそのようでありたいと思う。夜はすき焼きだった。卵をたっぷりつけて食べる。嬉しいね。両親となんとなくテレビを見ながら喋り、お風呂を入れて順番に入る。ここ一週間ほどのささやかな習慣。
20191231
紅白を見ながらぼんやりして、時々柚子サワーを飲んだ。さっき庭の木から捥いできた柚子の実を鼻先に近づける。いい匂いがする。男女別の赤白対抗戦というのは時代に合わない。本当にそうだなと思った。自分はパンセクシャルなんだろうな、と早いうちから気づいていたけれど、特に公言することはなかった。カテゴライズされるのは面倒だし、心の中は自由だ。…ちゃんってレズビアンかと思ってた、と女友達にいわれることがある。普通にお喋りしているだけでも、なんとなく感じ取るのかもしれない。紅白が終わって除夜の鐘の準備が始まる頃、彼に連絡をした。新年のご挨拶をしたいからちょっと待ってて。予告っていうのも変だなと思いながら。自分が幸せになることを躊躇っている彼に、来年は幸せになりましょうと伝えたい。
20191230
夜、ツタンカーメンの番組を観ながら柚子サワーを飲んでいた。湯冷めしないようにフリーズのジッパーを首元まで引き上げる。ミイラにする時、心臓だけを体内に残すのだそうだ。とりあえず私は、自分の心臓のことをどうにかしなくてはならない。彼は縁のある人だ。魂がビリビリと震えた人だ。それはわかっているけれど、どうしたらいいかわからない。私は相思相愛の人に出会うために、恋愛未遂の男子達と別れたのではなかったか。それなのに考えても考えてもわからない。花瓶に生けた黄色の雛菊を眺める。物言わず凛と咲く姿が美しかった。今の私は、彼に恋愛感情はないと思う。でも彼と話していると変わらず楽しくて、すごく仲が良くて、しっくり来すぎる。いっそ相手から何か言ってくれればいいのにと他力本願になる。一方で、本来の目的を忘れてはいけないと思う。彼にとって私がそうなのか違うのか、それは聞いてみないとわからない。いずれにしても結論は出す必要がある。