沢渡日記

日々徒然

20210326

深夜、好きだった人を見かけた。それは遠目で姿を確かめる程度のことだった。私はお喋りをしていた知り合いと席を立ち、別のフロアに向かった。どんな風に顔を合わせたらいいかわからなかった。もう半年以上会っておらず、全く連絡を取っていない。にも拘らず、あの人のことがめちゃくちゃ好きだと思ったのだ。一体私はどうなっているのだろう。気持ちの鮮烈さに自分でも驚いた。あの人の中の何が、これほど私を感動させるのだろうか。でも、と思い直す。もういいのだ。もう私から関わる気はないし、この気持ちは一人で抱えていくものだと決めている。私は彼と恋愛がしたいのではなかった。いい友達でいられる程度の好意の量、それをずっと保ち続けたかった。でも、好きすぎて友達でいられなくなった。ひどく悲しかった。仕方ない。誰かを好きになるというのはそういうことだ。あの人に会わなくなって、幸福が減ったことは間違いない。ただ、それと引き換えに、引力から解放されてスッキリと体が軽くなった。それでいいと思っている。もう誰にも気持ちを強く引っ張られたくない。バーカウンターで別の知り合いと会って、ビールをご馳走してくれるというので乾杯した。…さん彼氏できた?と聞かれた。全くできないし、もう一生できないかもしれない、と私は笑って答えた。相手はホッとしたような顔をした。そうなのか、と思った。私に恋人がいないことで、あなたが嬉しいならよかったね。まるで他人事のようにそう思って、淡く笑った。