沢渡日記

日々徒然

20190503

昨日の夕方、西洋占星術の鑑定をしてもらった。いま勉強中なのと彼女は言って、スマートフォンを出して私の生年月日と時間を入力して、ホロスコープを表示した。正円の中に十個の天体がランダムに位置し、赤と青の線で結ばれていた。天体のひとつひとつは見慣れない記号で記されており、ぱっと見では月しかわからなかった。水の元素が一つもないね。彼女はいった。情に溺れないでしょう?そう言われて少し考えた。よくわからなかった。情ってそもそも何なのだろう。一番多かったのが風の元素だった。地の元素よりもさらに。そういえば風が地を吹き飛ばしてしまう出来事が定期的に起こるな…と思い起こしていた。一定期間真剣に積み上げてきたものを、ある瞬間にパッと手放してしまうところがある。躊躇いもなく。行き止まりを感じたらもうダメなのかもしれない。難儀な性質だと思うけれど、自分としてはそれが一番自然な在り方なので仕方ない。あなたには固定の仲間はできなさそうね、流動的…。彼女がいった。私は苦笑した。風がね、とまた思った。私のホロスコープはバランスがいい方らしかった。ここに三角形があるでしょう。金星と海王星冥王星。彼女が指先で青い線を辿るのを見ていた。鑑定がひと段落した後、彼女のホロスコープがどんなものか聞いてみた。かなり過酷な内容で驚いた。試練は土星が存在するハウスにあるのよ、と彼女はいった。

20190502

昨日の午後、久しぶりの友達に会った。彼は私のことをお世話になった先輩、という表現をした。自分は先輩後輩という上下関係の感覚が薄いので、そうなの?と思った。タイ料理のお店でランチをしてから、お茶を飲みに行った。たまに行くシックなカフェだ。二人がけの丸テーブルに向かい合って座り、私はベリー系の紅茶を頼んだ。僕、彼女ができました。コーヒーを飲みながら彼は嬉しそうに報告してくれた。私は心から喜んだ。彼が軽い気持ちで女の子と付き合ったりしないことを知っていたから。きっと素敵な子なんだろうなと思った。彼女とは空気感が似てるんですよね、彼はいった。それはすごく大事だよね。ニコニコと私は返した。…さんは良い出会いありました?彼に近況を聞かれて、最近のことを少し話した。話しながら、私はあの人を許していないんだなと気づいた。怒りは正しく消化しなくてはならない。もう笑いかけたり話しかけたりすることはないだろう。カウンターに立つ背の高い店主は、相変わらず佇まいが静かで素敵だった。俯いてコーヒーを淹れる姿にこっそり見とれた。綺麗な男はいいなと思った。見ているだけで十分だけど。店の外に出ると雨が降り出していた。彼の折りたたみ傘に入れてもらって歩いた。最寄駅で別れ、私は電車を二本乗り継いだ。一時間後に駅で両親と待ち合わせをしていた。余裕をもって着きそうだ。

20190501

令和元年、おめでとう。明けてから、静かに本を読んだり、きのう何食べた?の録画を観ながら過ごした。ケンジが素直で可愛くて、ちょっと泣けた。冷めたカモミールティーを飲み切って、洗面台の前で歯を磨いた。温度のない、華奢な手を思い出した。きれいな敬語を使う人だった。令和の始めに想う人、ちょっと忘れないタイミングかもしれない。

20190429

昨日の午後、友達とカフェで待ち合わせた。彼女はいつもきちんとオシャレしていて可愛い。彼女が知り合いの近況などを話すのを聞きながら、声を聴いているだけでもう満足、という気持ちになった。誰かと一段仲良くなると、そうしているのが心地よくなる。団欒みたいなものを求めているのか。彼女と別れて家に帰り、旅の荷造りをした。食事はいつもの焼うどんで済ませた。明日は焼肉イベントなので朝は食べなくていいし。食欲がないわりに体が元気なのは、鉄のサプリを飲み始めてからのような気がする。

20190428

昨日の夜、久しぶりに男の人と踊った。以前少し好きかもしれないと思った人で、会うのは久しぶりだった。一度しか会ったことがなかったから、相手が私を憶えているかわからなかった。バーカウンターで声をかけると、被せるようにあっ…さんですよね、と返ってきて、彼の温度がわかった。グラスを合わせて少し話をした。この前一緒にお酒を飲んだ時すごく楽しかったから、またお会いしたかったんです。私は彼にニコニコと伝えた。言葉以上の重みを持たせず、程よく親密に。彼はふんわり笑った。それから、付かず離れず何となくそばにいた。こちらからはあまり話しかけなかった。私はいま恋愛をする余裕がないから気楽だなと思っていた。退屈だと空白を埋めるようにすぐ恋愛をしてしまうし、その上関係が終わるリスクが高いから相手を失うことが多い。仲良くなれそうな男の人とはもう付き合わないほうがいいのかもしれない。夜が更けた頃、彼の方から話しかけてくるようになった。緊張が少し解けたのかもしれない。品があって賢くて、どこか奥ゆかしい。好きなタイプだなぁ、と客観的に思った。冷静すぎて気持ちに色はつかなかった。帰りがけ、挨拶をしながら彼と握手をした。華奢な指だった。たまには男の人に触れたほうがいいのだ。美容のためにも。

20190427

深夜零時、テクノを聴いている。テクノをずっと聴いていると大脳新皮質が剥がれ、冷ややかな自分が顕われる。冷ややかで残酷で、人のことを何とも思わない自分。瞳の温度が氷点にまで下がり、唇の広角から笑みが消える。普段は巧妙にその自分を奥底に隠している。まるで存在しないかのように。だからほとんど忘れている。でもこれが素の私で、誰用でもない私。野生の。たまにこうして、ひっそりと自分を解放する。それは何からも追いつかれることのない快楽だ。立ち上がって、伏し目がちに踊り始める。誰かと話して温度が上がらないうちに。一筋の氷のままで。

20190424

昨日の夜、スーツを買った。ジャケットに袖を通すのは久しぶりで、こんなにかっちりしてたっけ…と驚いた。セットアップのパンツが思いがけずエレガントだった。その足で証明写真を撮りに行った。撮影前、入念に眉を整えた。何枚か撮っていくうちに表情が柔らかくなっていくようで、カメラマンさんと最後のワンショットを選んだ。家に帰り、転職サイトをずっと見ていたら十時を回ってしまった。それからAK男子のドラマを観ながら食事。ドタバタしていてコミカルで、何も考えずに観れるのがいい。