沢渡日記

日々徒然

20210730

仕事明け、図書館で待ち合わせした。ちょっと探したい本があるから後で迎えに行くね、といって私は思考関連の本棚を見にいった。岡潔の本を見つけて、立ったままパラパラとめくった。また今度ゆっくり読みに来ることにして、振り返って風の人を探した。彼は美術書の棚の前にいた。白いゆったりしたTシャツに黒のリュックを背負った立ち姿。少し俯いて本に目を落とす横顔がよかった。このままフレームに収めたいくらい。しばらく眺めてから声をかけに行った。外に出るとまた暑さの名残りが残っていた。タクシーに乗りませんか、と彼が言って、通り向いへ渡った。後部座席に並んで座ると車はゆっくり走り出した。彼は明日の話を始めた。何がしたいかが明確な人で、抑制が効いている。エモーショナルな表現をロジカルに構成する、そういう考え方をいいと思った。彼にもそう伝えた。途中、大きな橋を渡った。窓からの広い夕景を眺めた。きれい、と呟いて彼の方を見た。シートに置かれた私の右手の、2センチ先に彼の左手があった。その間をひんやりとクーラーが抜けていく。