沢渡日記

日々徒然

20191204

コーヒーを淹れて黒豆大福を食べた。テレビでは相棒が始まっている。右京さんと冠城の声を聴いているだけでよかった。ぼんやり仕事のことを考える。お客さんは解決を求めているし、スッキリ納得したくて電話をくれる。できないこともあるけど、できることは極力やりたい。でもそうすると量は捌けない。私はお客さんの役に立ちたいのが一番だ。それはこの先も変わらない気がする。この気持ちを持って別の場所へ移動するもよし。元々、ここにずっといたいという意識は希薄な方だ。浅く淹れたコーヒーは程よく、喉が渇いていたのか一息に飲んでしまった。大福の皮は少し硬くなっていた。子供の頃からずっと、遠くに行きたかった。それは自分が子供で無力だからだと思っていた。今でも常に、どこか別の場所へ行きたい。そして時期が来れば新しい場所へ向かう。終わりはない。あなたはどこにも辿り着きたくないんだよ。そう言われたことを思い出した。

20191203

帰り道、同期の女の子とビルを出た。冬の風が冷たくて、上着の襟元をかき合わせた。寒いね、疲れたー、気力が持たない!あと三日あるよ、長い〜、二人で好きなことを言いながら交差点まで歩き、手を振って別れた。また明日ね。信号を渡って別のビルに入った。デパ地下でお菓子を買おうと思った。去年の今頃、全然別の場所にいた。今はその頃に想像もしなかった場所で、新しい知り合いと二人で部活帰りみたいに歩いている。遠くまで来たなと思った。単純に移動がしたいだけなのかもしれない。今日のご褒美はどら焼きにした。

20191202

マドレーヌを食べながら紅茶を飲んだ。温めて飲んでみてから、冷たい方が香りがよかったと気づいた。テレビでは瀬戸くんがフルーツタルトを作っている。テーブルに頬杖をついてぼんやり眺めた。今日はあまり元気が出ない。寝不足のせいかもしれない。仕事明け、図書館で勉強して、家に帰ってからホワイトセージに火をつけて部屋中の空気を入れ替え、ニット類を洗濯した。夏の夕方、灰皿に入っているセージの燃えかすを見た彼に、これ普通のハーブだから、と私は慌てて言った。匂いでわかるよ、と彼はちょっと心外みたいに答えた。へえ、と思った。窓の外に白い煙が出て行くのを眺めながら、涙が流れるのに任せた。こんなに泣いたら脱水になってしまうと思った。今まで何度も男と別れて、その度に泣き暮らしてきたのに全然進歩がない。別れはいつも初めてのことのように悲しい。紅茶を飲み終えてテレビを消し、坂本龍一のピアノに切り替えた。アイビーの生育を仔細に眺めた。成長が止まっている。日照時間が減ったせいだろうか。ごめんなさい、元気のない主人で。葉先にそっと触れた。他の男子とデートでもすればいいのかもしれない。でも、自分から何かをする気に全くなれなかった。のろのろと立ち上がってキッチンへ向かう。同じ状況は長くは続かないはずだ。多分この喪に服すような気持ちも。

20191201

お昼過ぎ、雨の公園を散歩した。褪せて水気を失った紅葉の葉先にそっと触れる。冬が来たのだ。神社へお参りに行くと、前に長いお祈りをする人がいた。少し離れた場所でそれを待った。お祈りをしてから御神木の幹に触れた。雨でしっとりと濡れていた。パン屋でクリームパンとクロワッサンを買い、家に戻ってインスタントコーヒーを淹れた。ドラマ、俺の話は長い、の録画を見た。第八話、コタツとミカンは神回だ。ニートブラザーズとなったミツルとコージさん、二人のシーンがとにかくいい。ミカンくらい好きに食わせろって歌うコージさんがサイコーだった。こういう何気ない会話を積み重ねてだんだん仲良くなっていくんだよな…と思った。多分苦手なことの一つだ。人と距離が近すぎると途端に居心地がわるくなり、でも相手に失礼のないように距離が近い用の自分を演じる。そのうち全部がイヤになって、相手と果てしなく距離を置いたり別れたりしてしまう。この心情は一体何なのだろう。くたっと眠くなって、クッションに埋もれてそのまま眠った。起きると七時半で、マグにコーヒーが三分の一残っている。十一月の家計簿を整理した。

20191130

霜月が終わる。お昼にストーブの点検に入ってもらい、合間にアンチウィルソフトの更新を行なった。有効期限2022年11月30日。私はその頃何をしているだろう…と思った。ふと、また自然な流れが来て転職しているといいなと思った。病院に寄って薬をもらい、喫茶店にコーヒーを飲みに行った。久しぶりに友達と二人で長く話した。昨日会った人の話をしながら、要するに好きなタイプだったんだなと思った。魅力的な人と好きなタイプというのは少し違う。二人で話して一時間ほど経った頃、彼は遠慮がちに私の連絡先を聞いた。その感じがいいなと思った。交換しながら、聞くなら連絡くださいね、と私は冗談っぽくニッコリした。本当によく出会うねぇ、と彼女が私に言って、どうなるかわかんないよ、と私は答えた。この前別れた人のことを思い出した。あんな風に会えなくなるようなことはもうしたくなかった。それから彼女の話を聞いた。静かだけれど目が強い光をたたえている。この人はいつもやりたいことを真っ直ぐに見ていると思った。二年ぶりにばったり居合わせた知り合いの子はすっと痩せて大人になっていた。窓辺の席では二人連れの女の子達がひっそりと話していた。店の中にはカーペンターズが流れていた。A Song For Youが一番好きだと言うと、彼女は雨の日と月曜日はが好きだと言った。カーペンターズは少しだけ哀しいよね、と話した。

20191129

今夜はお祭りみたいですね。テーブル越しに立つ人に声をかけると、お祭り好きですか?と彼は尋ねた。柔和な笑顔。はい、と返事をしてニコッと笑った。立ち姿に風情があって、何となく話したいなと思った人だった。灰皿を借りたい、と言う彼が斜向かいの椅子に座り、二人で話した。彼は私がフロアで踊る姿を遠目で見ていたようで、確率論による人目を引く指数について話した。数式で表現されるのは初めてで、面白いなと思った。なんとなくこの人にはフルボリュームで話しても大丈夫な気がして、自分が普段考えていることをランダムに話した。彼は面白そうに話を聞き、それに対する考察を返した。理論とイメージがマーブルみたいに混ざり合う、不思議な話し方だった。会話が思いがけない方向に展開していくのを楽しみながら、時折私は彼の目を見た。知的で上品な顔立ちで、眼鏡がよく似合った。誰かに似ている気がしたけれど思い出せなかった。彼が仕事で創った作品をiPhoneで見せてもらいながら、これが好き、こっちも好き、と指をさした。緑と青の繊細な線が複雑に絡む文様に見入った。昔から、私の出会う人は視覚的な仕事をしている比率が高い。それは人の纏う雰囲気に滲み出るのだろうか。煙草の煙からふわりと甘い匂いがした。ガラムですか?と尋ねると、そう、と彼は嬉しそうに答えた。この匂い大好き、私もニッコリした。

20191128

夜、モトカレマニアを観ながらビタミンレモンを飲んでいた。ヤマシタ君の気持ちがピュアすぎて痛かった。  この世に別れなんてなければいいのにと思った。お互い好きなのに別れるのって、行き詰まるからなんだよなと思った。これ以上発展性がないことに、希望を見出せなくなる。早く寝よー。歯を磨いて目薬をさす。ベッドに入って電気毛布のスイッチをつける。今月は疲れたな。仕事は常にキャパオーバーだったし、前半はずっと体調が優れなかった。ようやく回復したところで男子と別れて。何だったんだ、デトックス?まあいい。身軽になったところで、来月は振り切って行きましょう。