沢渡日記

日々徒然

20190615

昨日の深夜、立ち話をした。少し離れた場所で彼が私を待っているのがわかった。鋭敏な人なので私の気配にもすぐに気づく。でも向こうから声をかけてくることはあまりない。つい、と椅子から立ち上がって声をかけた。彼はいつもの落ち着いた眼差しで私を見た。それから二人で話をした。いつもの穏やかな物言い、どこにも偏らない態度。彼は心を揺らさない。今の私もそれを望んではいなかった。あなたの心が揺れますように。そう願うことは、私の心が揺れますようにと願うのと同じだ。そうやってだんだんとバランスを欠いて懸想に落ちていく。喉乾いたから飲み物買ってくるね。バーカウンターに立つ彼の背中を眺めた。肩先も横顔も記憶と一部も違わなかった。好きだった人のフォルム。戻ってきた彼はハイネケンのビールを手にしていた。私の手に持つ瓶は空になっていた。もう少し話を続けたら心が開いてしまう。その兆しを感じて、こちらから会話を締めた。またね。友達のように握手をして別れた。取り扱いには慎重にならなくてはならない。そう思いながら店の重い扉を押した。頰に湿った風を感じた。ふたりの関係性は無重力でありたい。全てを濾過して愛だけ残すことに、私は随分と時間を割いたのだ。

20190614

昨日の夜、幸せだった。それがあなたの人徳だよと言ってもらえて、畏れ多いと思いながらも嬉しかった。遠方から会いにきてくれたことも、じっくり自分の人生に向き合っている話をしてくれたことも。やることがありすぎて、大変なことばかりだと思う日々の中で、たまにこういう贅沢な夜がある。本当にありがたい限りだと思う。焼き鳥を食べてビールを飲んで、それぞれの人生について話した。

20190612

昨日の夜、退職の書類に印鑑をついて床に敷き詰めたまま、料理をして食事をした。二ヶ月前に比べてボールペンで書く字が上手くなったなと思った。意外な副産物だ。洗い物を終えてから、印鑑の乾いた書類をまとめてクリアファイルに入れてバッグにしまった。今からシャワーを浴びたら十時からのドラマにかかってしまう。少し迷ってそのままバスルームに向かった。とうとうユイちゃんが残業を始めていた。周りがギスギスするのを見ていて、この感じわかるな…と思った。自分も含めて。仕事をしているとき、つい糊代が少なくなってしまう。意識しなくてはならない。タクミくんは種田さんのことが気になってキツそうだった。自分の婚約者が元カレと仕事をしていて、しかも元カレにはユイちゃんへの気持ちが残っている。ハードだと思った。髪を乾かしながら観ていたのであまり身が入らなかった。

20190606

昨日の夜、仕事で遅くなって図書館に行けなかった。家に帰るとポストに入社手続きの書類が届いていた。窓を開けて風を入れて、封を開けた。案内を確認し、書類に一通り目を通した。住民票を取らなくてはならない。あとは全部手元にあるものをコピーすれば良さそうだ。集中力が保てそうにないので記入するのは明日以降とした。書類をまとめて封筒に入れながら、印字された企業のロゴをしばらく眺めた。キッチンで豚肉とスライスした蕪を炒めて、林檎を切り、豆乳をグラスに注いだ。食事を済ませてシャワーを浴びてから、テレビでニュースを小さく流しながら教材を開いて読んだ。私は私と居るのが一番好きだと思う。一番気が合うし私は私を邪魔しない。

20190604

昨日の夜、残業になった。帰宅して、部屋の窓を開けて風を入れた。電気はつけなかった。椅子に座り、人材派遣会社へ書類選考の依頼を辞退するメールをした。キャリアコンサルタントから辛辣なアドバイスを受けて一度は凹んだけれど、自分の立ち位置を正確に知ることができたし、そのあと経歴書や面接対応に反映させることができた。丁寧にお詫びとお礼をした。立ち上がってキッチンで料理を始めた。明日は一社面接を辞退する電話をしなくては。食事をしてからシャワーを浴びて、寝転がって資格講座の教材を読んだ。実用的なことを学ぶのは楽しい。十二時になったのでベッドに移動した。哲学者の本を読みながら、前より意味がスッと頭に入ってくると思った。

20190603

昨日の午後、公園のベンチに寝転がっていた。青々しい桂の葉を見上げていたらウトウトしてきて、そのまま眠ってしまった。風が少し冷たくなり、起き上がると夕方の五時ちょうどだった。久しぶりにゆっくり休んだ気がした。ずっと慌ただしかったし、終わるまでやり続けるだろうなと思っていた。春先から気になっていた企業があって、ふとしたきっかけで面接の日程が決まり、数日後に面接を受けにいった。ほとなくして採用の連絡が来た。ぽかんとするくらい、あっという間だった。転職活動を始めてから毎日転職サイト四社に目を通して、洪水のような情報量を受け止めた。そうしていくうちに自分が何故仕事を変えたかったのか、だんだんと形が顕れてきた。実際的で汎用的な仕事がしたい。流用できるスキルを身につけたい。自分はまず動いて、動き続けながら見えてくるものを捉える。スポーツの取り組み方に似ている気がした。立ち上がって空を見上げると、日差しが幾分柔らかくなっていた。公園を出て神社へお参りにいった。目を閉じて手を合わせ、丁寧にお礼を述べた。この先も正しい努力ができますように。お祈りの後で御神木の幹に触れると、じんわりと何かが伝わってくるような気がした。

20190527

昨日の夕方、リュックにポンジュースと豆パンをつめて公園に行った。向かい合ったカップルが黄色いフリスビーを投げて遊んでいた。広々した芝生のベンチに座り、食事にした、恋人達を見ても羨ましく思わなかった。ただ、恋にかまけていられる状態はいいなと思った。私もそのくらい安定したいものだ。今日は朝からあまり転職活動をしたくなくて、ゆっくりヨガをしたり吉本ばななのエッセイを読んで過ごした。その後、転職サイトをハシゴしたけれど、気になる求人募集は見当たらなかった。だんだん煮詰まってきたので買い出しに行き、散歩に出てきた。さっき神社で巨大な御神木の幹に触れたときのことを思い出した。最近の自分はあまりに近視眼的で、かえって何も見えなくなっているのかもしれないと思った。家に帰り、四則計算の練習を二時間。割り算、分数、小数。連立方程式を解いて、それから√の問題へ移った。√?さっぱり忘れている。