沢渡日記

日々徒然

2021223

最近、全く食欲がないので夕食も適当だ。毎年十二月は疲れの蓄積がひどく、感覚も過剰になったり無になったり振り幅が大きい。友達がSNSに集合写真をアップしている。楽しかった気持ちが溢れるのだろう。意地悪なのかもしれないが、こういう時ヒンヤリとした気持ちになる。皆の承認によって自分を満たしていることを人に発表するのは、恥ずかしいことではないのだろうか。己に自信がない様を晒しているように思える。自分は大勢の忘年会に参加するなら、その場にいなくて話題になる方がずっと好きだ。娯楽の提供になる。昔から一貫してそうかもしれない。

20211221

夜、件の人と食事に行く。ビルを出て店に向かう途中、雨が降り出した。件の人は、さりげなく折りたたみ傘を開いて私に差しかけた。想像より背が低いんだなと思った。箸の置き方、グラスの持ち上げ方、身のこなしが優雅で、育ちの良さを感じる。エピソードを聞きながら、病的に神経質な人だと思う。ただ、ユーモアがあって知性的なせいか会話は楽しかった。デートは総額格闘技であり、即興のセッションなので、相手の観察は必須である。以前より、私が無邪気に笑うのが好きだと言われていたので、そういうシーンは多めに取るようにした。相手の満足度を針が振り切るまで高める、それが私のデートにおける取り組みであり、目標である。誰とでも、どんなシチュエーションのデートでも。帰宅してからご馳走になったお礼をメッセージすると、返信で、…さん可愛かったです、とあった。今夜の成果報酬、と思った。ご寵愛ありがとうございます、と返した。

20211220

夜、カフェに行く。疲れていたのでココアを頼んだ。お互いに仕事が煮詰まっているので、相手の話を聞いたり逆に聞いてもらったりする。このひとは思いやりの深い善人なのに、話していると苛々するのはなぜだろう、と思う。雑なのだ。会話の拾い方の目が粗いし、感情の機微がわからない。それなのに相手の顔色を伺うようなスタンスなのだ。私はこの人を嫌いではないし感謝の気持ちもあるが、尊敬はしていない。多分どこかで利用しているのだろう。そんな顔は一ミリもせずに。でも、それで自分のことを嫌になったりはしない。人と人とは力関係で成り立っている。そのことは否めない。利用されるのが悔しいなら、誰よりも賢く強かになるしかない。

20211219

日曜は昼までベッドから出ない。熱い紅茶を淹れてベッドサイドに置き、ツインピークスを立て続けに観る。第二シーズンは色々盛りだくさんすぎて、さらっと観ていると頭がついていかなくなる。夜釣りの真夜中、少佐が突然どっかに消えたのが強烈だった。機密って??ボビーはあの素晴らしい父親を見習ってマトモにならないものか…と思う。ジョシーがどれだけワルいのかが気になる。ハリーの澄んだ瞳を踏みにじらないことを祈る。地味だけど素敵なのはホークだ。インディオの末裔だと聞いて、ほう…と思った。ターコイズのピアスがちらりと耳元で揺れる。午後、珈琲を飲み、マトモな食事をしてから仕事の資料を読む。相続税のくだりで、配偶者の相続は一億六千万まで非課税とある。いま自分に一億六千万あったら何するかな、と考えて、今の仕事はそこそこで辞めて、次はコンビニでバイトだなと思った。物欲が全くない自分を流通業に投入したら、どんなことを感じて何を学べるのかに興味がある。それと、マーケティング感覚を体感的に身につけたい。少し前まで秘書業に就きたかったが、それは今の仕事で近いことができるので、クリアとすることにした。色んな仕事がしたいといっても、体はひとつなのでキリがない。一生働きたいと考えた時に、自分の事業もなんとか立ち上げなくては…と思うが、外堀の勉強ばかりで中心までなかなか辿り着かない。夜、買い物に出た。キンと冷たい空気が気持ちよかった。真っ白な月を眺めてしばらくぼんやりとした。

20211217

夜になりかけの頃、バーに行く。マリアカラスを聴きながら、冬に似合うと思った。隣合わせた女の子と格闘技の話をする。私はボクササイズや空手といった打撃系に行ったが、彼女は柔術に関心があるらしい。人によってグッとくるポイントが違う。ある程度強いものじゃないと感知できないし、反応できない。そう私がいうと、閾値の話になった。自分の中で上がりすぎた閾値を、どうやって下げたらいいのかわからないと思った。何もかも退屈だから転職でもしないことには持たなかった、とふと気づくなどした。昔ちょっと恋愛的なことのあった男性と居合わせたが、一言も話さなかった。その人は、初めて出会った時と、一年後にばったり会った時に全く同じ話をした。会話の精度も内容も浅いままで、何も変わっていない。そのことにガッカリして、もういい…と思った。どんどん変わっていく人、深くなっていく人、そのスピード感が同じでないと難しい。

20211216

夜、久しぶりにおっさんずラブのシーズン1を観て笑い転げた。なんて面白いドラマなんだと思った。何回も観たはずなのに破壊力がすごい。最近誰も好きになっていないので、恋愛の負荷すごいなーと遠巻きな気持ち。私がこの魂のまま男に生まれたら女が嫌いな気がする、と謎にずっと思っている。必然的にBLになるだろう。自分はすっぴんで前髪を作ってクシャッとさせると男子のようになるので、そんなことをしつつ輪の中に入って楽しんだ。最近仕事がキツいので、夜は変なテンションになりやすい。青汁を飲むと野菜を食べた気になるからいいな、と思う。

20211129

帰宅して、ベランダで煙草を吸った。イヤホンで音楽を聴きながら、自分は愛の才能はないが、精巧な蜘蛛の巣を持っていると思った。食後、キャラメルブラウニーを食べながらタリスカーの水割りを飲む。寝っ転がって腹斜筋のトレーニングをする。鍋料理は洗い物が少なくてよかった。平日の夜、いかにダラダラ過ごすかが大事だ。今日仕事をしながら、自分は力を出し惜しみしてるんじゃないか、と思った。エネルギーが太くまっすぐ通らない感じがある。精一杯やっているのだが、どこかでブレーキをかけている。冷静に、という気持ちが強く働く。ドラマの中では、ジェームス愛してる、とドナが甘く呟く。愛なんてそんな簡単に育つものなのか?と訝しんだ。三年はかかるよ。