沢渡日記

日々徒然

20190830

薄闇の中、ソファーに座ってぼんやりと音楽を聴いていた。午前一時。今週も勉強漬けだった。頭と体の疲れがひたひたと押し寄せて、ふわりと眠気に包まれた。隣、いいですか?声をかけられて、見上げると百合の人が立っていた。今夜も美しいなと思った。夜に咲く白い百合。もちろん。私は返事をして、彼を隣に促した。トニックウォーターってブラックライトで光るのよ。私はジントニックのグラスを持ち上げて言った。それ俺が教えたんじゃん、と彼が言って、あ、と私は思い出した。そういえばいつかの夏に、彼と同じ話をしたことがあった。キニーネって成分なんだよ、と彼は言った。そうだ、それも聞いた。私は照れて笑った。それから音楽を聴きながら二人で何気ない話をした。彼の声は木管楽器のようで聴き心地が良かった。少し早めのテンポの、低いクラリネットの音色。知り合ってから一度も、私は彼に恋をしたことがない。でも、不思議と信頼はしていた。多分、生き物として。この信頼はどこから来るのだろう、とぼんやり思った。会話が途切れて沈黙が降りた。この前、素敵でした。私は呟いた。それで彼には伝わったようだった。彼はさりげなく品のない冗談を口にして、でも彼の上品さは少しも失われなかった。詩のような人だと思った。センスがいいのね、私はそう言ってニッコリした。