沢渡日記

日々徒然

20210825

仕事は上々だ。ようやく感覚野で作業ができるようになってきた。絵を見るようにしてバーッと数字を作って、あとで細かくデジタルにチェックする。一昨日、N社のことで先輩からお礼を言われた。私としては脳が割れそうなくらい考えて、なんとか形にしたものだった。嬉しかった。苦労しつつではあるが、着々と前進が感じられる。仕事明け、コンビニでアメリカン・スピリットを買った。自分のために煙草を買うのは十年以上ぶりかもしれない。帰宅して、小雨の中ベランダに出た。煙草を唇にくわえた感覚を久しぶりに思い出した。火はなかなかつかなかった。ようやく葉が赤く灯って煙を吸い込むと、私がよく知っている、穏やかで冷静な自分に戻った。最後のデートの日、風の人と公園を散歩した。紅葉の樹の下のベンチに座った。葉が色づくとすごく綺麗なんだよ、と話した。その日の私は心がザラザラしていて、相手の気を引く話題ばかり考えていた。でも何か話すたびに心がスカスカになって、あんまり楽しくなかった。褪せてしまったことをすでに体は知っていた。だから抵抗したかったのだ。私は彼と長い時間を一緒に過ごしてみたくて、それが私のやりたいことだったから。強固な意志。真ん中の気持ちが真空だったにも拘らず。夜空は曇っていて、腕を上げると煙草の火がぼんやり宙に灯った。心の炎症が治るまで、まだ時間がかかる。あなたのことを信頼しています。風の人は言った。彼は正しい言葉で、私の心を切り裂いた。ビーチサンダルを引っ掛けた足先に、湿った風が抜けていく。雨はまだ止みそうもない。出口のない気持ちを乗せて、煙草を吸った。