沢渡日記

日々徒然

20190813

カウンターの端で、トマトサワーを飲みながら本を読んでいた。本棚からふと手にして、椅子に座ってパラパラとめくり始めた。それはハワイの奥深いヒーリング手法についての本だった。記憶をクリーニングする、という言葉が繰り返し出て来た。不思議な気持ちになって、あちこちを飛ばし飛ばし読んでいくと、メビウスの輪について描かれたページを指先が何度も開いた。店主にこの本買います、と声をかけて支払いをして、改めてゆっくり読み始めた。途中で食事が出てきたので、一旦本を置いて食べて、また読んだ。店に大声で話しながら入って来た男女が隣の席に座った。仲間が集まって来て、全員で品のない会話を繰り広げ始めた。空気がどんどん濁っていくのを感じた。窒息しそうになって顔をあげると、カウンターの中では店主が凛とした佇まいで働いていた。ショートカットの襟足からうなじにかけてのラインが美しかった。店の外に出ると空気が濃く感じられた。私は深呼吸をして駅までの道を歩いた。家に着き、暗い部屋の中でメビウスの輪を思い浮かべて目を閉じた。私には成就の先にある日々のイメージがない、そう思った。全ての男を放してしまったのは、何もない場所に立ってゼロから構築したかったから。同じことだ。私はいつも同じことをしている。ゼロからイチにするまで、そこにしか存在していない。