沢渡日記

日々徒然

20210711

午後二時に待ち合わせて、公園を散歩した。その公園は私がいつも時間を過ごしている場所だ。以前、緑の中にいると落ち着くという話をしたら、いいなぁ、と風の人が言うので誘ってみたのだ。駆け足で公園に向かっていたら、いろはすのボトルを持った彼に後ろから声をかけられた。少年っぽいフォルムだなと思った。緑の中を二人でゆっくり歩いて、藤棚の下のベンチに座って話をした。仕事でいいことがあったことを報告したら、彼も喜んでくれた。それからぐるりと園内を一周した。夏は紫色の花が多い。今年、急に青や紫の花が好きになった、と私は話した。樹々を見上げながら、いいなぁ…自分の住むエリアは緑が全然足りない、と彼は言った。いいでしょう、とつい自慢したくなってしまう。喉が渇いたので近くのカフェまで歩いた。店は混んでおり、窓際のカウンター席に通された。彼はアイスコーヒーを、私はスペシャブレンドを頼んだ。さっぱりとコクがあって美味しかった。あなたの創るものは私にとって普遍性がある、という話をした。それ以上はうまく説明ができなかった。その創作物は私の胸の奥の一点、かつ銀河のような場所に届くのだった。でも決して私の心にぴたっと寄り添わないところがよかった。別の星にいる人の心が私の心に投影していて、不思議と種類が同じ、という感覚に近い。カフェを出ると綺麗な夕方だった。少し一緒に歩きたいな、と私は言った。国道に出てタクシーを拾えば、多分彼も帰りやすいだろうと思った。しばらくお喋りしながら歩いていると、やっぱり自分が…さんの家まで送ります。と彼が言った。こういう逡巡は楽しいなと思った。急の来客で部屋は多少散らかっていたけれど、花瓶に生けられた青いデルフィニウムがシンと綺麗な気配を発していた。リビングに招き入れると、彼は立ったまましばらく窓からの景色を眺めていた。いいですね…緑が見えて。彼が柔らかな声で呟くのを聴いた。