沢渡日記

日々徒然

20210807

最寄駅で降りて、駅前を二人で歩いた。くっきりとした青空に、朧な雲がたなびいている。真夏を運んでいく風。うちにあるビールはアサヒスーパードライです。私が言った。家の玄関でコンバースを脱いでいると、それいいですね、と風の人が言った。気に入ってて。でも真夏にハイカットは暑かった、と私は笑った。部屋中の窓を開けて風を通すと、レースのカーテンが大きくはためいた。キッチンでグラスにビールを注いで、マカダミアナッツと一緒に出した。彼はAppleMusicで音楽を選んでくれた。さっきまで過ごしていたカフェと同じ気配の、しっとりとしたジャズが流れてくる。ふと、この人にはグレーのローカットが似合いそうだな、と思った。ビールはキリッと冷えていて、喉をぐんぐん通った。ビール日和だね、と私は言った。ローテーブルに置かれたエビアンのボトルには、スヌーピーの絵柄が描かれていた。このサイズが良くて、エビアンが特に好きなわけじゃないんだけど。彼は呟いた。私は彼がボトルを握った時についた窪みを見ていた。それから何の話をしたのだろう。徒然にお喋りしていたら約束の一時間半が経った。タクシー呼びますね、と彼は言った。多分五分くらいで着くと思う。もう?私が抗議の声を上げて立ち上がると、彼は静かに私を見つめた。私は椅子に座った彼を立ったまま抱きしめた。唇が彼のこめかみに触れそうな距離にあった。ノーハグで帰るつもりだった?私が尋ねると、彼は黙ったまま私の腰を引き寄せた。